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  • エピソード「黒土の泥から生まれたファンタジー」 3歳児のドキュメンテーションのエピソードより

お知らせ

 黒土と水をバケツに入れ、保育者は泥遊びをしていた3歳児に「この泥めっちゃ気持ちいいで」と声をかけた。男児AとBが興味を示し、手をバケツに入れ、豪快に握ったり混ぜたりする。保育者も一緒に底から混ぜようとすると、バコッと音が鳴る。「なんかブって音したで」「オナラちゃう?」とA。「土もオナラするんやったんや。面白いな」と保育者が言うと、Bが「オナラ?オナラ…。オナラ虫がおるんじゃない!?」と言った。「なるほど、オナラする虫がかくれんぼしてるんか」と保育者が言う。その後も3人は、音が鳴る度に「あ、オナラ」「うん、オナラや」と確かめ合うように顔を見合わせて笑った。夕方のサークルタイムでそのことを話すと、他児も手を上げ何か言いたそうにする。保育者が尋ねると、「大きい魚が入ってたんじゃない」「いや、オタマジャクシがいて、パクパクしてたんだよ」と、他児からも新しい考えが生まれ、イメージが広がっていった。

【省察】
なんてかわいい!!と思える瞬間でした。砂場の小石交じりの泥とは違い、滑らかで肌触りの良い黒土の泥が、手を入れた瞬間子どもの心を掴みます。保育者はAやBとかき混ぜているところでした。バコッという音は、その際に起こった、土と土の間に空気が入って解離した音です。保育者にとっては何でもない音が、Aからすると初めての体験で、土から音がするなんて何故だろう・不思議・面白いという感覚をもちました。幼児期は、アニミズム的(生命化、擬人化)に物事をとらえ、自らの体験をもとに身の回りの現象を理解していきます。そこでAは、土から出た音と自分の体から出るオナラという音を関連づけました。しかしBは、土がオナラをするのは納得いかず、オナラをする虫(=オナラ虫)が中にいるんだと考えます。「違うよ。土が解離する音やで」と言ってしまえばその時の知識にはなるかもしれません。しかし、3歳児ならではのファンタジーの世界を保育者も楽しまずにはいられませんでした。まだまだ知識より感性を育てる時期なのが分かります。
ただこの面白さを共有したいとクラスで話したことが、虫ではなくて魚だ、いや魚の中でもオタマジャクシだ、と、すぐその世界に入って意見する子どもたちの姿には感心させられました。「オタマジャクシがいて、パクパクしてた」と言えたのも、クラスで飼育しているオタマジャクシが口から空気泡を出しているのをよく見ていたことが分かります。改めて、子どもを取り巻く園環境が豊かであるよう努めること、心が動く瞬間を保育者も一緒に楽しむことを大切にしたいと思います。

社会福祉法人 任天会 日野の森こども園
園長 松本崇史
西宮市のこども園より

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